信頼経営 仕事人として、人として何よりも大切なこと

鎌倉達郎氏による『信頼経営 仕事人として、人として何よりも大切なこと』(幻冬舎メディアコンサルティング)は、美容医療の最前線で培われた実践知を「信頼」というキーワードで体系化した一冊です。

著者は聖心美容クリニック統括院長として約30年にわたり患者と向き合ってきた医師であり、業界団体での活動経験も豊富です。

本書は、目に見えにくい「信頼」という要素がいかに組織経営の土台となるのかを、現場の視点から解き明かしています。

信頼は経営の「インフラ」である

鎌倉氏は「信頼は経営のインフラである」と強調しています。

売上や効率性といった数字の裏には、患者やスタッフとの関係性、さらには業界全体の信用が存在し、それを支えるのが「信頼」であるという立場です。

美容医療は、結果が目に見えて評価される厳しい現場です。
そこでは、一度でも信頼を損なうと患者は離れ、組織の評判も大きく傷つきます。そのため著者は、信頼を「結果を支える基盤」と位置づけています。

単なる理念ではなく、現場で日々積み重ねる行為――丁寧な説明、誠実な対応、失敗の公開と改善――が信頼を形成するのです。

失敗から学び、仕組みに変える

本書の特徴のひとつは、著者自身の失敗体験を隠さず取り上げている点です。

美容医療の現場では、クレームや予期せぬトラブルが避けられません。

鎌倉氏はその過程で「失敗を隠すのではなく、共有し、改善へとつなげる」姿勢を強調しています。

たとえば、患者対応における不十分な説明からトラブルが起きた場合、個人の責任追及ではなく、組織として仕組みを整える契機とします。
こうした改善の積み重ねがスタッフ間の信頼を高め、組織文化をつくりあげるのです。

さらに、スタッフ育成においても信頼の積み重ねが基盤になります。

誤りを犯した際に一方的に叱責するのではなく、成長につながるようサポートする。

こうした「信頼に基づくマネジメント」が、現場での離職率の低減や組織の安定につながると説明されています。

信頼経営は業種を超えて役立つ

本書は美容医療の実例を扱っていますが、出版社の紹介では「経営者、管理職、起業家など幅広い層に向けた実務書」と位置づけられています。

信頼を中心に据えたマネジメントは、医療現場だけでなく、どのような組織でも共通して活用できる考え方です。

例えば、顧客対応やクレーム処理、組織内の意思疎通といった課題に直面するビジネスパーソンにとって、信頼の重要性を改めて認識し、日々の行動へ落とし込む指針となるでしょう。

本書は具体的エピソードと原理原則を往復する形で記述されています。

理論書ではなく「現場からの実務書」として、読みやすさと実用性が意識された構成になっていることも特徴です。

本書は経営者やリーダーにとって、数字では測れない価値を見直す契機となるでしょう。

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