『87歳、現役トレーダー シゲルさんの教え 資産18億円を築いた「投資術」』(藤本茂著/ダイヤモンド社)は、昭和・平成・令和の相場を渡ってきた個人投資家の実録と投資哲学を一冊に凝縮した本です。
本ブログの運営者であり、テレビ東京、サイバーエージェント・オリコンなどの大株主でもある嶋村吉洋氏も個人投資家として活躍されていますが、著者はまさに68年間も投資家として活躍されており、経験と実績が詰まった一冊となっています。
著者は1936年生まれ。
19歳で株式投資を始め、バブル崩壊で資産を10億円から2億円にまで減らしながらも、相場に向き合い続け、現在は資産18億円規模、月間売買代金は約6億円という“現役”の姿を語ります。
本書の冒頭は、自身の来歴から始まります。
貧しい農家の四人きょうだいの末っ子として生まれ、高校卒業後にペットショップへ就職。
来店客だった証券会社関係者との会話がきっかけで投資の世界へ。のちに雀荘経営をしながら株式投資にのめり込み、1986年には転換社債をきっかけに専業投資家へ。
バブル崩壊では大きな損失を経験しますが、退場せずに市場にとどまり続けた背景には、「相場のことは相場に聞け」「頭と尻尾はくれてやれ」といった、相場格言に根ざした姿勢があったと述べられます。
華々しい成功だけでなく、失敗の履歴とそこからの学びが率直に綴られている点が読みどころです。
著者の一日は午前2時に始動。
早朝に米国市場の動きを点検し、その日の日本市場のシナリオを組み立てる——この徹底した準備がデイトレードの土台です。
取引環境はパソコン3台+モニター3台体制。
常時およそ80銘柄を監視・売買し、取引終了後はその日の反省を欠かさない。
売買手法は、成行/指値、現物/信用といった基本の運用、テクニカル分析を軸にした判断が中心で、「売るべし買うべし休むべし」の姿勢を重視します。
テクニカルを主軸にしつつも“勘や過去の成功体験に依存しない”と明言し、機関投資家との対峙においても個人投資家の強みを活かす視点が語られます。
実務篇で特に重要なのが、著者が掲げる「1:2:6」のルール。
詳細は本書に譲りますが、強気度や確度に応じて比重を切り替えながら攻める“段階戦術”として位置づけられ、「増収・増益・増配」への着目、ビジネスモデルの理解、決算プレイの活用、四季報の使い倒しといった“勝ち筋”と一体で語られます。
中小型株を主戦場とする理由、IPOセカンダリーへの視線、ナンピン(買い下がり)との付き合い方、材料だけでは株価は動かないという戒めなど、個人投資家がつまずきやすい論点にも具体的に踏み込みます。
さらに「人の行く裏に道あり、花の山」という逆張りの心得、損をしてもクヨクヨしないメンタルマネジメントまで、売買と心理の両輪で語られるのが本書の骨格です。
終盤では、年齢を理由に判断力が衰えるとは限らないというメッセージが強調されます。
心・技・体の整え方、食やペットによるリカバリーまで触れながら、“投資に年齢は関係ない”というモットーを掲げます。
著者は日経CNBCを流しながら淡々と売買を続ける生活を公開し、「儲けたい人に問う覚悟」という締めくくりで、相場と向き合う姿勢を読者に問いかけます。
そんな人たちにオススメの一冊です。